第三章

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  「……とても人間如きの保有する法力によって制御出来る法術ではないな。まさか、肉体のみならず、己が生み出す法術すらも強化出来るというのか。いや、しかし……」  そんなことは有り得ない、とでも言うように、その首をゆっくりと横に振る青年。その姿に、アイリスはやはり悔しそうに歯を軋ませる。  これだけ大規模な法術の発動前なのだ。怯えるまではいかずとも、せめて身構えるくらいはして貰えるものと思っていた。  しかし、前方に佇む魔王は、呆れたように首を振っている。彼女にとって、これは侮辱に等しい行動であった。  実際には、彼女の不可解なる能力を理解しようと、思案を巡らせていただけなのだが……。  青年の真意には気付かぬまま、少女はすぅ、と息を大きく吸い込み、心を落ち着かせて意識を集中した。  
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