第三章

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   要約するに、アイリスが眼前の魔王に勝利するためには、彼の身体を覆う『見えざる障壁』をも貫く程の破壊力を持った一撃を繰り出すしかない、ということだ。  一体、何れ程の威力が必要なのか。それを想定するのは困難であるが、しかし、元より手加減は不要である。  アイリスの目的は、魔王の打倒なのだ。法術による彼女の一撃を叩き込まれた彼が瀕死の重症を負い、涙ながらに自らの敗けを認めるのなら満足であるし、寧ろ眼前の青年のそんな惨めなる姿を見てみたい気もするが、しかし、一撃の許に彼が完全に消滅してしまったとしても、それはそれで『魔王の討伐』という彼女の目的は達せられることとなる。  その生死など、彼女には心底どうでもいい些末な問題であった。だからこそ、彼女は自らの法術に、自身の中に在る全てを込める。 「……人間と、そして魔物。この世界は、一体どちらを選択するのか。この一撃で、全てが決まります」  言い終えるが早いか、少女は自らの掌に凝縮した法力を、一気に解放する。真っ白な光が、瞬く間に青年の姿を飲み込んだ。  
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