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「御無事ですか、我が主……」
小さな声でそう問い掛ける使用人に、主たる青年の声が不満げにこう答える。
「貴様の能力なら、いちいち問わずとも……ああ、視界が悪くて我が視点では何も見えぬか。少し待っていろ」
意味深な言葉を溢しつつ、白煙の中より姿を現す青年。その姿に、表情無き使用人はその口許を僅かに緩ませる。
使用人の安堵を感じ取った青年は、ふん、と小さく鼻を鳴らした後、ゆっくりと周囲を見渡した。
「凄まじいな……」
彼がそう評するのも、無理は無い。
吹き飛んだ壁と床。そこに立ち込める、靄の如き白煙。法術の余波か、彼等の周囲には法力の欠片と思しき幾つもの光の粒が浮遊し、直下の床は未だ僅かに震動し続けている。
「御怪我はありませんか」
「怪我の無い部位を探す方が難しいさ」
そう語る青年の額から、鮮やかな赤色の雫が溢れ、頬を伝って床へと落ちた。
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