第一章

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  「さぁ、もう直ぐ出立の儀が始まります。城門に急ぎましょう、アイリス様。貴女に同行する戦士達も、既に御到着のことと思います」 「……! 貴方も同行してくれるのではないの、ミノス。貴方も魔王の討伐隊に志願していたのでしょう」  その言葉に、ミノスと呼ばれた聖職者は視線を落とす。 「志願していたのですが、同行の資格無しとの通達を受けました」 「貴方程の法術士が、どうして」 「恐らくですが、選考機関に司祭様が何か働き掛けられたのでしょう」 「そう……」  ミノスと同様、何処か寂しげに視線を落とした少女は、直後にその感情を気取られぬように振り向き、窓の桟に手を掛ける。  清掃が行き届いているのだろう。桟に触れた彼女の綺麗な手に、埃や塵は一切付着しなかった 「仕方の無いことなのでしょうね。病める者や、貧しき者。全ての者に等しく手を差し伸べるのが、教会の役割だもの。『法術(ホウジュツ)』、特に治癒系統の法術に秀でた貴方程の法術士が帝国を離れてしまったら、教会は機能しなくなってしまうわ」  
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