第三章

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  「わ、我が主……!」  表情無き使用人の女性が、珍しくその顔に戸惑いの色を貼り付ける。しかし、それも無理の無いことと言えるだろう。  眼前の青年は、壁から引き剥がした少女の、その勇者とは到底想像出来ぬ程に華奢な身体を、躊躇うこともないままに自らの胸の中へと誘ったのだ。 「どう為さるおつもりですか」 「死体で人形遊びをする趣味は無い。我は『愛玩動物』なるものが欲しいのだ」  淡々とした口調で告げながら、青年はアイリスの身体をぎゅっ、と強く抱き締める。意識無き少女の虚ろなる瞳が、僅かに揺れた。 「……能力を使ってはなりませんよ」 「解っている。此処で我が『絶対』の能力を付与したところで、『此奴が死ぬ』、という情報が改変出来なくなるだけだ」 「では……」 「先ずは我が法力を流し込み、虚脱状態から回復させる。意識さえ取り戻せば、脳の方は此奴が自ら再生するだろう」  
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