第三章

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   そう上手くいくだろうか。そう言いたげな視線を向ける使用人を余所に、青年は目を瞑り、意識を集中する。  彼には、少女を救えるという確信があった。  法力を使い果たせば自然に効果が消滅する法術とは違い、一部の類稀なる才覚を持つ者にしか発現することのない『固有の能力』というものは、行使者が自ら能力を停止する意思を示さない限り、又は行使者が死亡でもしない限り、永続的にその効力を発揮し続けるものである。  魔王の扱う『絶対』の能力も、城内のあらゆる機能を維持するために、常時その効果を発揮している。ただ、彼の能力によって付与される『絶対』の性質は、行使する度にその優位性が新たに能力を付与された物体に上書きされていくため、自身の肉体などに関しては定期的に能力を解除し、優位性の更新を行っている。  アイリスは虚脱状態となる直前、大規模な法術を行使するために、自らの能力を用いて脳の機能を強化していた。その状態で一気に法力を使い切り、虚脱状態に陥ったのならば、法力を充填して虚脱から回復させれば無意識下であってもその強化の能力が再起動する筈だ。  
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