第三章

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  「此奴の固有能力は、差し詰め『自らの身体能力の値を振り分ける能力』、といったところだろうか」  何処か得意気に、青年が推論を語る。恐らく全てを知っているであろう使用人の女性は、肯定も否定もしないまま、ただその視線を少女の方へと落とす。 「人間に限らず、殆どの生命には、知力や腕力や脚力といった能力値が存在する。その平均値や限界値は種族ごと、個体ごとによっても異なるが、それの能力は自らの能力値を、他の各能力に振り分け直すことが出来る。謂わば、『選択』の力だな」  難解な言葉を吐く主に、使用人の女性はやはり視線を落としたまま、その頭を一度だけ頷かせた。それに構わず、主たる青年は更に推察を語る。 「この能力を使えば、敵を斬る際の一瞬の間だけ、自らの『知力』や『脚力』などの能力値を犠牲にして『膂力』を上昇させ、人間には繰り出せぬ筈の強烈な一閃を繰り出すことも可能だ。自らの能力値を全て『脚力』に振り分ければ、一瞬にして敵に近付くことも出来る。実に煩雑、そして、実に素晴らしき能力だ」  
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