第三章

18/19
前へ
/568ページ
次へ
   青年の語るその少女の能力は、論ずる迄もなく何の確証も無い彼の推論でしかないのだが、それでも彼は惜しみ無い称賛の言葉を紡ぐ。  しかし、流石と言うべきか、彼の推理は概ね正解であったと言える。いや、寧ろ、異常な迄に正解であった。  能力の概要から、能力名に至るまで、全てが彼の語った通りである。  『アイリス・エリュシオン』の固有能力ーー『選択』は、自らの有している全ての身体能力値を、体のあらゆる部位に再分配する能力である。  学問を修めたところで、腕力は変化しない。鍛練を重ねたところで、頭脳明晰になれる訳ではない。そんな語る迄もない一般常識を、彼女の能力は悉く打ち破る。  知識を得れば得る程に、鍛練を重ねれば重ねる程に、身体能力値の合計は上昇する。目視出来ないその値を、彼女は『選択した部位』に、自在に振り分けることが出来るのだ。  
/568ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加