第三章

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   読書をして得た知力を腕力に再分配し、凄まじい剣撃を繰り出すことが出来る。鍛練によって得た筋力を知力に再分配し、素晴らしき状況判断能力を発揮することや、高度な演算技術を必要とする高位の法術を手繰ることが出来る。  便利ではあるものの、力の再分配の結果によっては諸刃の剣と成り得るため、まさに『煩雑なる能力』と評するに値する力と言えるだろう。  無論、『絶対』の能力を持つ青年からすれば、実に些細な能力であると鼻で笑える程の能力なのだろうが、それでも彼がその能力を『煩雑且つ素晴らしい能力』と評したのは、自身との戦闘の中でアイリスが自らの能力を上手く活用していたと感じたからであろう。 「……本当に愛玩動物として迎えるおつもりですか」 「当然だろう」  使用人から発せられた問いに、青年が即答する。 「折角人間の姿を取っているのだ。その感情を少しは理解しておきたいだろう。それで心の平穏を得られるのならば、尚更だ」  そう言って満足げに微笑む青年に、使用人は心の中で深い溜め息を吐き出した。  
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