第一章

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   窓外の蒼穹を仰ぎつつ、そう語るアイリス。その言葉に、ミノスはゆっくりと首を振る。 「僕の法術など、些末なる力です。貴女の能力に比べれば……」 「私の能力(チカラ)では、病める者を発見し、教会まで運ぶことは出来ても、その苦しみを取り除くことまでは出来ないわ。人を癒し、人を救うその法術(チカラ)を、貴方は誇りに思うべきよ」  そう告げて、優しげな笑みを浮かべる。そうして再び歩き出そうとしたアイリスだったが、直後にミノスによってその腕を掴まれ、引き留められてしまった。 「ミノス?」 「こんなもの、貴女には不要かも知れませんが……」  そう言って彼が取り出したのは、小さな青緑色の宝石の着いた首飾りだった。宝石の中央には、神聖なる教会の紋章が輝いている。 「……! これを、私に?」 「貴女があらゆる困難に打ち勝てるように、此処に、この国に無事に帰って来られるように、祈りを込めてこの紋章を刻ませて頂きました。これを、どうか僕の代わりに同行させて下さい」  
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