第四章

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  「御早う御座います」 「うわぁっ!」  唐突に投げ掛けられた挨拶に、体ごと驚いたアイリスは、そんな間の抜けた声を溢しながらもベッドの上で僅かに後退る。  慌てて上体を起こし、声のした方を見遣れば、使用人の女性がベッドの側に立ち、彼女に向かって頭を垂れていた。 「貴女、何時の間にそこに……」 「たった今です。アイリス様の起床を感じ取りましたので、参上させて頂きました。驚かせてしまい、大変申し訳ありません」  そう言って再び深々と頭を垂れる女性に、アイリスがふぅ、と小さな溜め息を吐き出す。未だ僅かに高鳴る鼓動に合わせ、頭の奥に微かな痛みが生じた。  『起床を感じ取った』、という台詞から推察するに、彼女の能力は感知系統の能力なのだろう。  しかし、よくよく思い返してみれば、この城で初めて出会った時、彼女はアイリスの考えていることを正確に読み取っていた。あれも彼女の能力の一端だと仮定するならば、ただの『感知能力』と考えるのは早計であると言えるだろう。  
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