第四章

4/20
前へ
/568ページ
次へ
   そして、やはりそんなアイリスの思考をも読み取ったのだろう。使用人の女性は、斯く儚げに語り出す。 「私めの有する能力は、『同調』、と謂う力で御座います」 「同調……?」 「はい。あらゆる感覚や思考を、対象と同調させる能力で御座います」  その言葉を完全には理解出来ぬままに、アイリスは納得したようにその頭を何度も頷かせる。  考えを正確に読み取ったことも、そして、先程アイリスの起床を感じ取ったことも、やはり彼女の能力の一端であったようだ。 「一度でも目にした相手にしか同調出来ず、更に、能力を行使している間は私自身が静止していなければならない、という制約はありますが、その制約さえ守っていれば、対象が何処で何を見て、何を感じているのか、その全ての情報を、自身が実際に体験しているかのように得ることが可能です。私の感覚や思考を対象に授ける、といったようなことは出来ませんが……」  懇切丁寧に説明する使用人の女性に、アイリスはその口許を微かに緩ませた。  
/568ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加