第四章

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  「そんな便利な能力を持っているのなら、私の有する能力については、最早説明する必要は無さそうね」 「……はい。『選択』の能力、で御座いますね……」 「そう。同じ強化系統の能力という面で見れば、あの魔王の持つ『絶対』の能力の下位互換と言えるでしょうね」  自虐的にそう告げて、更に自嘲気味な笑みを付け足す。 「彼が勝利するという結末は、『絶対』の能力を使う迄もない、元より私なんかには改変不可能な未来だった。つまりは、そういうことよね」  その声が、僅かに震える。滲む景色から目を背けるように、彼女は再びその腕で自らの目許を覆った。 「分不相応な法術(チカラ)を行使して法力を使い果たした筈なのに、私がこうして生き永らえているのも、あの魔王が法力を充足してくれたお陰なのでしょう。打倒すると決意した相手に命を救われるなんて、まったく、とんだお笑い草だわ」  掛ける言葉が見付からず、使用人の女性も押し黙る。  
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