第四章

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  「問題無いわ。少し身体が重いけれど……」 「一度は虚脱の状態にまでなったのだ。法力を消耗し易くなっているだろうから、暫くの間は法術を使うな。安静にしていろ」  語りつつ、ベッドの横へと歩いて来る青年。その姿を真っ直ぐに見つめ、少女は微笑む。 「ええ、気を付けるわ。ありがとう」 「……? 何だ。やけに素直だな」 「命を救われたのだから、お礼を言うのは当然のことでしょう。私は自他共に認める程の命知らずだし、おまけに何処かの魔王の邸宅に勝手に侵入する程に礼儀も知らないけれど、少なくとも恩知らずではないつもりよ」 「ほう。礼節についてはこれから躾けてやろうと思っていたのだが、その必要は無さそうだな」  その言葉に、一瞬だけ目を見開いた少女は、直後に深い溜め息を吐き出す。 「私を愛玩動物にしようなどと、まだ考えていたのですか。命を救われたからと言って、それを私が承諾するとでも?」  アイリスが呆れたようにそう問い掛けると、青年は彼女に背を向け、ベッドの端に座って足を組んだ。  
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