第四章

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  「何故その二つしか選択肢がないのか、甚だ気掛かりなところではあるのだけれど……まあ、いいでしょう。話があると言うのなら、取り敢えずは聞きましょうか」  呆れたように、且つ諦めたようにそう告げるアイリス。そんな彼女の顔を横目で確認しながら、青年は満足げに微笑む。  そして、前方へと視線を戻した彼は、ゆっくりとした口調で問い掛けた。 「我が何故、法術士ラダムントより、『魔王』と呼称されたのか。貴様には解るか」 「……? それは……、貴方の『能力(チカラ)』を見たからではないの?」 「我の有する『絶対』の能力は、確かに強大だ。至高の能力、と言っても過言ではないだろう。しかし、これだけを見て我を魔王と……『魔物達の王』と呼称するのは、些か不自然ではないか?」 「…………」  確かに、彼の言う通りだ。  法術士ラダムントは、その死の間際に、『魔物の王を見た』と語ったと伝えられている。普通に考えれば、それは『数多の魔物達を統べる者』と解釈されるべき言葉である。  
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