第四章

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  「絶対的な強さ……」  小さな声で復唱し、アイリスは視線を落とす。  彼女もまた、そんな『絶対的な強さ』を目の当たりにした者の一人だ。彼女の剣を砕いたあの椅子が、もしも意思を持つ魔物だったなら、何れだけの絶望を抱いたのかは想像に難くない。  寧ろ、青年の能力を知って猶、立ち向かっていった彼女の勇気は、称賛に値するだろう。 「我は求められるがまま、知性有る一部の魔物達に我が能力を授けた。無論、幾つかの条件付きでな」  ふん、と鼻を鳴らす青年に、少女が首を傾ぐ。 「『条件』とは?」 「大したものではないさ。陥落させたこの城を我に寄越すこととか、人間とのくだらぬ戦争や同族の派閥争いに我を巻き込まぬこととか、まあ、そんなところだ」  そう言って、青年が自嘲気味に笑う。  悠々自適な生活を邪魔されたくない。そんな願いの込められた『条件』に、アイリスも思わず小さな笑い声を溢した。  
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