第四章

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  「その後、我が『絶対』の能力を得た魔物達は各地に散り、人間達を蹂躙していった。それから今日に至るまでのことは、最早語るまでもあるまい」  手をひらひらと振り、斯く物憂げな微笑を浮かべつつも、青年は更に告げる。 「幾多の国が滅ぼされ、数多の命が散り、世界の一部が闇に閉ざされた。無論、この未来を予期していた訳ではないが、魔物達の覇道を手助けした我は、正しく『魔王』と呼ぶに相応しい存在であろう」 「…………」  法術士ラダムントは、本当にそんな理由で彼を魔王と呼んだのだろうか。ふと、そんな疑問がアイリスの脳裏を過る。  ラダムントは、この青年と出逢った後に故郷へと帰還し、『魔物の王を見た』という言葉を最後にこの世を去った。  それだけを聞けば、彼を死に至らしめたのは、その魔物の王たる存在であると考えるところだろう。しかし、当の青年は、アイリスから氏の最期を告げられるまで、彼の死を知らなかったのだ。  
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