第五章

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   アイリスがこの城に愛玩動物として迎えられてから、既に十日余りが経過していた。  この墓所の件も含め、此処に暮らすことで彼女も理解したが、城主たる魔物の青年はそれ程悪い魔物ではないらしい。  確認の取りようが無いものの、彼女に誓った通り、他の魔物達に掛けられた『絶対』の能力は即座に解除してくれたようだ。  一点、アイリスに対して、やはり客人などという扱いではなく、『愛玩動物』としての扱いで接してくる点だけが、彼女にとっては不満だった。  愛玩動物となった直後、使用人の女性の『愛玩動物には名前を付けるもの』という余計な一言のせいで、青年と使用人の間で『彼女にどんな名前を与えるか』という論争が起こった時には、彼女は自身の選択が間違っていたのではないかと頭を抱えたが、結局は本来の名である『アイリス』と呼称することが決まったため、隙を見て逃げ出してしまおうかと考えていた彼女はその企てを実行せずに済んでいた。  
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