ハンニン探し

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 この国に、カゲでネズミの()、と呼ばれる施設(しせつ)姿(すがた)をあらわしたのは、十年ほど前のことだ。 その施設には例外(れいがい)なく、すべての子どもたちが収容(しゅうよう)されてしまったんだ。 ぼくも、ここに来てから、すでに七年。 この施設にいると、なんの楽しみもなかった。 この施設で(はたら)く人たちは、みんなぼくら子どものことを、それこそペスト(きん)にまみれたネズミを見るような目で、さげすむようにちらりと見るのだった。  いいや、この施設(しせつ)の人間だけじゃない。 ほとんどのオトナたちは、まるで子どもたちが存在しなければいいのに、なんて思っているくらいに、ひどい顔つきでにらみつけてくる。 けれどもこっけいなことに、そんなオトナたちは、フランねえさんとヒューゴ、あの人が悪者(わるもの)呼ばわりされると、トレンドに乗り遅れないように、いっせいにさも自分たちは子どもの味方ですよという仮面(かめん)をつけ始めるのだ。 トレンド入りしなければ、彼彼女(かれかのじょ)らは、子どもがどんなに悲しもうが、関係ない顔をしているのに。 それどころか、ふだんは黒死病(こくしびょう)をばらまくネズミを()()ることの得意なネズミ()りが現れないかなあと、あくびをしながら考えているような連中(れんちゅう)であるのに。
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