第3話 授業

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「なんで疑問系なの」  馬鹿にするのではなく、純粋におかしいから笑う、そんなごく普通の笑顔を宗谷はやってのける。その拍子に黒髪が揺れ、キヨミの心までドキリと揺らした。 「ね、あたしもやっていい? 将来モデルになるのが夢なんだけど、このままだと身長足りそうになくって」  キヨミは呆気にとられた。  真っ直ぐな眼差し。中学生で、本気でなりたいものがあって、それをてらいなく言えるだなんて。  異星人か、この人。キヨミは疑った。  キヨミにも将来なりたいものがないわけではない。でもそれを口に出すのは禁じていた。自信が無いから? 笑われるから? 恥ずかしいから? それもあるけど、それだけじゃないような気がする。そういった自分でも捉えようのない心持ちをひょいと飛び越え、人懐っこく他人にすり寄れるなんて。同じ人種とは到底思えない。 「そ、そりゃあ、構わないけど」 「やった。志田さん、ありがとう」  どもるキヨミに、宗谷が花開くような微笑みを浮かべ、礼を述べた時。二人は視聴覚室に着いていた。     
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