第3話 授業

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 さきの授業中、宗谷サキは何の気なしに周囲の誰かに仕入れたばかりのガッテンネタを披露したのだろう(一見、姿勢正しく真面目にビデオを観ているふうなキヨミはスルーされたのだと思う、多分)。目立たないタイプのキヨミが誰かに話したところでふーん、で終わるネタだったろうに、彼女はあっという間にクラス中に広めてみせた。  驚くべき情報網、浸透力、カリスマ性。彼女はきっとそのうち二年A組を侵略してしまうに違いない。 「いっちに、いっちに、いっちに」 「キヨ、遅れてるよー」 「う、うん」  そこはかとない無常観を噛み締めつつ、ヨッチの号令に従がって足を動かす。  それはさながらサバンナの河を渡るヌーの大群。二年A組のつま先き立ち行進は、教室まで延々と続いたのだった。
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