第4話 昼休み

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 背後に佇んでいたのは、貸し出しカウンターに座っていた男子生徒だった。小脇に教科書、ノート、筆記用具を挟み、手には鍵をぶら下げている。  夢中になって読んでいるうちに、結構な時間が経過していたらしい。閉める? そういえばと、思い出す。図書室で授業をサボっていた生徒がいて、休み時間と放課後以外は施錠することになっていたんだっけ。キヨミは前頭部に手をやりつつ、立ち上がった。 「あの、これ、借りていきます」  こんなにかさばる本を借りるつもりはなかったが、時間切れだ、しようがない。と、『家庭の医学』を差し出そうとした瞬間。  その鈍器並みの重さにか、朝からろくに食事が喉を通らなかったせいか――、すぅっと絞り取られるように血が下がり、ああ、倒れる、とどこか客観的に思う。薄暗い中、駆け寄る男子生徒の上履きに入った赤ラインがやたら鮮やかだった。一瞬遅れて彼が持っていた教科書、ノート、ペンケースがばらばらと降りそそぐ。  差し伸ばされる学生服の腕。それはあまりにありふれたシークエンス、ボーイ・ミーツ・ガール……     
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