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だからってこれはないんじゃない、なったらオシマイじゃん、どうしてもうちょっと堪えられなかったの――愛用のブラシを片手に、己の不甲斐無さを罵る。
この小さな楕円が新たなストレスを呼び、新たなストレスは楕円を拡大・成長・増殖させ、中くらいになった楕円がさらなる新たなストレスを呼び、さらなる新たなストレスは中くらいの楕円を拡大・成長・増殖させ、大きくなった楕円が……ああ! げに恐ろしき無限地獄。
こうなってはもう、なすべきことはただ一つ。だけども一体どうして遺書を書こう。『拝啓……敬具』みたいな定型文はあるのだろうか。ペンの色はやっぱり黒だろうか。水性でも良いだろうか。そもそもウチに真面目なレターセットってあったっけ? 最後に手紙を出した時は『りぼん』の付録を使ったような……
「早くしないと遅れるわよ」
母親の声に、釣り上げられた魚みたいにビクンと両肩が跳ね上がる。
もちろん、遺書なんて本気じゃない。不謹慎であることも承知している。『ハゲができたので死にます』なんて書いたら、どこのお坊さんも読経を唱えてくれないだろう。
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