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人気の無い廊下を一人歩きながら、キヨミは溜息をついた。
役割分担を終えた頃には、ヨッチもミカも橋本もいなかった。キヨミを置いてさっさと部活動へ行ってしまったらしい。
キヨミは一人で学校指定のジャージに着替え、今はワックス缶が置いてあった倉庫の鍵を返却するために、職員室へ向かう途中だった。ついでに用具室に寄って、足りなかったモップを取ってこなくてはならない。
窓からのぞくグラウンドでは早くも部活動が始まっていた。掛け声を上げながら野球部のランニング隊が通り過ぎる。テニス部女子が扇のように優雅にラケットを振る。ハンドボール部男子が雄叫びを上げ少年ジャンプさながらにゴールを決める……
この中学では部活動が盛んだ。それもそのはず強制参加であり、全生徒どこかの部に所属し、放課後は元気溌剌、中学生らしく振舞うことが義務付けられていた。ワックス掛けが終わればキヨミも部活に出なくてはならない。この上なく気が重いが。
考え事をしていたせいか、気付けば職員室の戸の前を通り過ぎていた。後ろ向きに数歩戻り、失礼しますと呟いて入室する。すぐ右手の壁に設えてある鍵置き場に倉庫の鍵を引っ掛け、キヨミはそのまま退出しようとした。と。
「志田、ちょっと待ってくれ!」
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