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愕然とキヨミは顔を上げた。星野は「先生にはなんでもお見通しだよ」と言わんばかりのとっときの笑顔を浮かべ、白い歯をキラリ★と光らせている。
「いや思春期だもんなあ、そうだよなあ」
何がおかしいのか、HAHAHAHA!と笑い、机をばしばしと叩く。
悟る。この人、阿呆だ。
キヨミは一瞬でもこの男に相談しようかと考えた己を激しく恥じた。
「中学の頃、俺も音楽の先生に憧れてさ、年上の異性へのファースト・ラブっての?」
デスクを叩き続けているせいで、置かれているものが揺れる。ペン立て、マグカップ、本、プリント、写真立て……ん? と、キヨミは目を止める。いつもは生徒に隠すように伏せられていたはずのそれ(隠すぐらいなら飾るなと言いたいが)。今は珍しく顔を上げている。某ネズミの国で、星野と恋人らしき人物が肩を寄せ合う写真。まるでわざわざ見せ付けるように。
『俺も音楽の先生に憧れててな』
ハッとして星野の言葉を繰り返す。
そういえば、今朝、星野と目が合った。にまにましていたのが恥ずかしくて、頭に血が昇って、もしかしたら赤面していたかもしれない。
まさか。まさかまさかまさかと思う。
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