第6話 清掃・後半戦

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第6話 清掃・後半戦

 全ての机を廊下に出し、見事な正方形となった教室に、キヨミはもくもくとワックスを塗っていた。職員室での怒りが収まったわけではない。押さえ込むために、ただひたすら床を磨いていた。ハゲた日にワックス掛け。一体どういう皮肉だといっそ笑い出したくなるが、笑えるはずがない。キヨミはさらにモップに力を込めた。  掃除当番は男女合わせて六人。真面目に作業しているのはそのうち半分、女子だけだった。一方の男子は、雑巾キャッチボール、モップチャンバラ、ワックス追いかけっこと、二度とない〝中二〟という時を謳歌していた。 「っはん、ガキが。かかって来いよ、お前の技なんか俺の邪眼で楽勝見切ってやるゼ」 「喰らえ、最終奥義トリプルアクセルインファナルトランスキッィィィクー」 「ずり、お前ルール守れよ、ってか死ねよ、かかと着いてるし、ワンペナなー」  スケートリンクならぬワックスリンクをつま先立ちで無駄に華麗に縦横無尽に舞う彼ら。出来立てのリンクは、乾き切っておらず、足跡がべったり残る。最初こそは注意していた他の女子も、もうその気力が失せたのか、キヨミ同様もくもくと重ね塗りに励んでいた。     
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