第1話 登校

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 絶対に知られてはならない。あと一年と数カ月続くスクールライフを、通学路に沿って流れる用水路のごとく、汚泥とゴミと腐臭まみれにするわけにはいかない。いっそ油性ペンで塗り潰してしまおうかと考える。しかし、もしばれたら、今度はその隠蔽行為を追及されてしまうに違いない。  最悪の事態を想定し、最善を目指す。  再度、鏡を見つめる。そこには生真面目な表情をした女子中学生がいた。いつもは気にする鼻の脇に住み着いたニキビにも構っていられない。  キヨミは悲愴な決意をする。第二次世界大戦末期ひめゆり部隊の少女たちには遠く及ばなくとも、現代に生きる彼女なりに必死に。  かくて、長い長い一日の幕が上がったのだった。
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