第2話 HR

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第2話 HR

 学校とはサファリパークに似ている。  囲われた広い広い檻の中、いくつかのゾーンに別れ、それなりに自由に、でも監視されながら、集団生活を営む。キヨミはそれが良いとも悪いとも思っていなかった。ただ厳然たるルールであり、良し悪しよりも、順応できるかが重要なのであって。 「でね、考えたわけよ。彼の好きなブランドって何かなって。相手は先輩なわけじゃん、あんまり図々しくすると三年生に睨まれるでしょ。だからさり気におそろにしてアピールしようかなって」 「それ名案かもー。あたしも試そうかなー」 「…………」 「でっしょ。だからさ土曜日、部活が終わったら駅ビル付き合ってくんない?」 「オッケー、ついでに五階で服も見てこーよ」 「…………」 「デート用の?」 「それはちょっと気ぃ早過ぎでしょー」  キャハハハハ、と束の間、教室を制圧する甲高い笑い声が響き――ピタリと止んで。 「…………?」  吉川チエこと『ヨッチ』と、三上モトコこと『ミカ』が放つ鋭い視線に、キヨミはようやく気付いた。 「話聞いてなかったっしょ?」 「キヨってば、ノリわるーい」     
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