第2話 HR

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 あんたってなんかぼーっとしてるよね、そうだよしゃっきりしなよー、と、責めるような口調に、キヨミは己の失策(エラー)を悟る。  三学期に入って数週間経過した教室は、どこか緩んだムードに包まれていた。石油ストーブが白々と燃えている、というだけの理由ではない。クラス替えから四つ目の季節を迎え、誰もが教室内でのポジションを獲得し、それなりにリラックスしていた。満足しているかどうかは別として。  そしてキヨミもミカと共にヨッチの席を取り囲んで雑談に興じている最中だった。二人は級友であり、部活動――ソフトボール部――の仲間でもある。休み時間は大概一緒に過ごす、いわゆる『親友』だ。教室の移動も、更衣室での着替えも、トイレも一緒。ようするに、学校生活における最小単位の群のようなもの。群から離れては、囲われた檻の中とはいえ生き抜けない。  二人の話を聞いていないわけでは無かったが、咀嚼できていなかった。キヨミは焦りつつも、落ち着けと自身に言い聞かす。おおよその見当はつく。女子中学生の最もクールな話題は決まっているのだ。  ……ええと、モリムラ。いやそれは前の人だ、そうじゃなくて今は。リーチをかけた相手を前に、ポンジャンの牌を切る心持ちで、 「た、タカシナ先輩の話でしょ?」     
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