第4話 昼休み

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第4話 昼休み

 午前の授業が終わり、給食もそこそこに済ませると、ヨッチとミカの『トイレ行こー』の誘いを断ってキヨミは一人で教室を出た。  廊下は走ってはいけない。だから競歩の勢いで進む。まだつま先立ちでふらふらと廊下を漂っている男子を数人追い越して。  昼休みは十二時三十分から十三時十五分まで。すでに十三時に近い。この中学の校舎は、北館、中央館、南館の三棟から成っている。二年A組は北館二階の西端。そして目的地は南館四階の東端――つまり、ほぼ端から端の移動だった。どんなに急いでも往復で五分以上はかかってしまう。階段を上り、渡り廊下をダッシュして、残り十五分弱。着いた頃には息切れし、脇のあたりが汗ばんでいた。  大人たちは読書を奨励しているのに、どうしてこんな空中楼閣のような場所に設えるのだろう。キヨミは毒づきながら、目的地――図書室の扉を開けた。  粉っぽいような独特の古い本の香りが鼻をつく。昼休みだというのに、室内はカウンターに貸し出し係の図書委員が座っているだけで閑散としていた。もっともこちらにとっては好都合。閲覧テーブルの間を抜けて、真っ直ぐに書架が林立する突き当たりまで進む。      
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