第8話 部活動

12/15
54人が本棚に入れています
本棚に追加
/67
 バットを軽く握り、肩幅よりやや広くスタンスを取る。キヨミは右バッターだ。打ち上げないためにバットを早めに出すと、どうしても三遊間に転がしやすい。だが、ショートには心細そうな顔をした一年生が入っている。東山は生徒会にも所属しているので、その関係で今日は部活を休んだのだろう。なるほど、お気に入りの部員が不在で小山田が不機嫌なはずだ。  早く終わらせて、ヨッチにきちんと謝りたい。浅ましいとはわかっていても。  でも、どこへ打つ? この無間地獄から脱出するには、どうすれば良い?  下手の考え休むに似たり、とはよくいったもの。キャッチャーミットにボールが吸い込まれる小気味意良い音に、我に返れば、キヨミはツーストライクまで追い込まれていた。 「志田、やる気あんのか!」  あれこれと考えているうちに二球も見逃していた。  もう画策する余裕はない。そもそも考えたところで、実行するほどの技術がなかった。  ピッチャーがキャッチャーに向かって右腕を真っ直ぐに伸ばす。野球とは違い、ソフトボールのピッチャーは下投げで投球する。反動を付け、ぐるりと風車のように回転させた腕から、するりとボールが放たれ――  今しなくてはいけないこと。今できること。そんなことが一体あるのか。ああもう、逃げ出したい。自分の背にも翼が生えて、どこか遠くへ飛んでいってしまいたいなんて―― 『ワックス掛け、お疲れ様でした。部活、頑張ってください』     
/67

最初のコメントを投稿しよう!