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普通の生活が俺たちには大切だった。
一緒に学校に行って勉強し、帰り道も一緒。平凡で在り来たりな日常。それが何よりの宝物。
ずっとこの生活が続いてくれればそれだけでよかった。
それなのに、その日は唐突に訪れた。
有紗は掃除当番だった。ゴミ捨てに行ったはずなのに不自然に戻って来るのが遅い有紗を俺は心配して見に行った。
校舎裏のゴミ捨て場で有紗を見つけた。有紗に何か話しかけている見知らぬ男子生徒も。
ただならぬ雰囲気に出て行くのを一瞬躊躇った。それを俺はこれから先ずっと後悔することになる。
「好きなんだ!」
耳を疑った。嘘だと思いたかった。まさか有紗に好意を伝えているというのか。まさか。まさか。よりによって有紗に。
飛び出そうと思った。今すぐ飛び出して、有紗を守ろうと。
足を踏み出した。でも、もう手遅れだった。なにもかも。
「いやっ!」
有紗の悲痛な悲鳴が痛かった。
僕が有紗を守る前に、それは起こってしまった。
有紗の華奢な身体から得体の知れない何かが生み出されていく。
腹の辺りから蠢き始めた黒い物体は、真っ直ぐに見知らぬ男子生徒へと向かっていた。
そしてその男子生徒を貫き、跡形もなく消してしまった。
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