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第50話 side reika
なぜ、人は悲恋を美化するのだろう。ちっとも美しくないのに。
結局、一人酒で酔うわ、映画で泣くわ、翌朝は酷い顔だった。
本当、ちっとも美しくない。こんな時ほど、自分磨き。浮腫んだ顔でそう思った。
メイクレッスンでも行こうかしら。それとも髪の毛でも切ろうかな。この、失恋で髪を切るという発想が古いわよね。それに、振られた相手が目の前にいるのだから、当て付けみたいだわ。
結局、午後から買い物に出かける事にした。私には落ち込んでる暇はない。男ウケのワンピースかスカートの一つでも買おう。そう思って、出掛けた。
ディスプレイされたスカートに目がいく。風でふわりと舞うような……柔らかいライン。こういうの、私にも似合うかしら。
同じ物を見つけて、手を伸ばした。その手がスカートに届く前に人の手とぶつかった。
「あ、ごめんなさい」
「こちらこそ、あの、どうぞ」
譲り合って顔を上げると……そこには綺麗な人。認識すると同時に
「あーっ!!! 」
彼女が大きな声をあげた。私は思わず、目を伏せてしまった。吉良くんと一緒にいた、彼女だ。軽く一礼して、この場を立ち去ろうとした。会いたくなかった。
「あの! 待って。会いたかった」
そう言った彼女に立ち止まる。会いたかった?私に?
「人違いでは……? 」
「いいえ、いいえ。あの……」
彼女は慌てて
「私と、付き合って貰えませんか」
そう、言った。
「え……」
「あ、告白しちゃった! えと……お茶に」
……少し戸惑ったが
「ええ」頷いた。
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