11005人が本棚に入れています
本棚に追加
近くのカフェに入ると
「彼から聞きましたか？ 」
そう、尋ねてきた。
「……聞いていません。だけど……知っています」
俯いたまま、答えた。彼が、あなたを選んだことを。
「あの日、何があったかも？ 」
「それは……」
「知らないでしょう？ 」
そう言って笑う彼女に何も言えなかった。
「ごめんなさい」
彼女が謝る。
「謝られる事では……」
誰を好きになるかは、仕方がない事だ。
「謝らないといけない事なんです。私、吉良くんがあなたといるの見えてなくて。約束……されてたんですよね？ 」
「ええ。でも……」
「彼から聞いてますか？ ……その解決しないと駄目な事がある……とか……それっぽい事でも」
「過去……の事、ですか？ 」
あの原因となった人、元彼女さんの事よね？
「私、吉良くんと同じ大学だったんです。それで、最近その過去と会うのに、私がお手伝いをしていたわけで……」
彼女の言葉を理解するために、頭の中で反芻した。……えっと？
「簡単に言います。私、彼が引きずっていた……」
「……元彼女さん？ 」
そう、続けた。彼が昔に話してくれた元彼女さんのイメージとは全然違う、綺麗な人だけど。
「の、友達です。だから、私の事は彼、最近まで知らなかったんじゃないかな？ 」
え？別にいるの？元彼女さん
「じゃあ、彼……とは……」
「気にするに値しない存在です」
……それは？
「えっと……」
「その、元カノも吉良くんを引きずっててですね、それを解決するのに……私が橋渡しをした次第」
「そう……だったんですね。でも元カノさんは……」
「あ、吉良くんもそうですけど、過去を昇華出来ていなかっただけで、今も好きなわけではありません。昔、好きだった。彼女も、今は他に好きな人が」
「じゃあ……」
「ええ。それを、私がちょっとした勘違いで、彼女がただ旅行に行ってたのを行方不明と勘違いし、大騒ぎを……。吉良くんも、彼女の今の彼氏も巻き込んで……それがあの日……です」
目の前の彼女が赤くなるのがわかった。嘘は……ないと思う。こんな彼女に。
「あなたも、巻き込んでしまいました。だから、誤解させてしまった事を謝りたくて……。最近、取引先の近く……あ、前回お会いした所とか、そちらの会社の回りとかウロウロしてたんですけど、こんな所でお会いできるとは」
そう言うとチラリとこちらを見た。
最初のコメントを投稿しよう！