第50話 side reika

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「全部、全部解決しました」 「じゃあ、彼は……」 「ええ、晴れて、身も心もフリーです」 「じゃあ、あなたと? 」 ……少しの沈黙。 「はい? 気にするに値しない……と、言いましたけど? 」 「だって、とってもお似合いで。き、綺麗だし」 そう言うと、彼女は目を細め、呆れるような表情を浮かべた。 「鏡ってご存知です? 」 「え? 鏡? ええ」 「出して下さい」 「え? ええ」 そう言って、小さな鏡を出した。 「見てください。鏡。何か映ってますか? 」 いつも通り。いや、今日はちょっとひどめの顔が映っている。 「私……何かついてます? 」 「ええ、非常に整った美しいパーツが」 「……」 どういうことかしら。 「いいですか? 今、あなたが見たものが“美人”です。私ではありません」 「ええ!? 」 「お似合いですよ、あなたの方が」 「私……」 「それに、私、友達の元彼とかムリー」 彼女はしかめっ面で、胸の前に大きくバッテンを作った。そんな彼女に、思わず吹き出した。……嘘はない。わざわざ、誤解を解こうと私を探してくれていた彼女の気持ちに。 「吉良くんのスケッチブックに……あなたの絵があったもので、すっかり……」 「ああ、待ち時間暇だったので書いてもらいました。5分位でサッと描けるんです。あの人。器用ですよね、他の子も描いて貰ってましたよ。見ました? 」 「他の人……も? いいえ」 ……他のページにもあったんだ。 「あのスケッチブックは、誰かが貰って、今のは何描いてるのかなぁ? 見せて貰って下さいね」 そう、なんだ……。 「という、次第。あ、ケーキ……食べません? 」 不意に彼女がそう言った。メニューと、お店のショーケースを交互に見ながら。 「食べようかな」 誤解。誤解だった。だから、本人に聞かないとって……思ってたのに。 「あの……吉良くんには、秘密にしてもらえません? 私が話した事」 「ええ、もちろん。ありがとう」 「これで私も、本当にお役ごめんです。あ、これ美味しそう」 「ね、迷っちゃう」 「あ、お名前聞いても? 」 「中条麗佳です。」 「私、皆川湊です。彼氏募集中です」 「ええ!? そんなに綺麗なのに」 綺麗で、愛想もいい。なのに…… 「ほら! 鏡! 」 「湊ちゃんこそ、見なさいよ」 この人、自覚がないのだわ。綺麗な事に。 「鏡とか、持ってない」 「鏡は持っておきなさいよ」 割りと、サバサバしてるのね。気さくで、面白い。 「ハンカチは? 」 ハンカチ?持ってるでしょう。当然。 「ハンカチも必需品」 「ですよね」 それから 「半分こ、しない? 」 「いいわね、狙ってたの」 彼女の提案に乗る。私の選んだケーキはムースとスポンジが層になっている。彼女のは濃厚なチーズのタルト。 「ハンターだね」 「今年は、肉食でいこうと思って」 「私も誰か……」 「あ、いい人……」 思わず、そう言った。それを遮るように 「ごめんなさい、次はイタリア人って決めてるの」 「なぜ、イタリア人なの? 」 「情熱的だから」 「イタリア人ってそうなの? 」 「知らない」 適当だわ、この人。 「……。ぷっ」 そこから、二人で笑った。 「吉良くん、イタリア人ぽいよね」 「イタリア人ってあんなの? 」 「知らない」 「もう! 言いたいだけでしょ」 だけど、何となく吉良くんはイタリア人ぽいというニュアンスは、理解できる。
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