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そこから、仲良くケーキを半分こして、さっきの店に戻り、お互いどっちが似合うとか何とか好き放題言い合って、各々にワンピースを買って帰った。
私は春らしい柔らかい生地のワンピース。タイトではなく、少しふわりとしたもの。彼女は、細身の身体にぴったりのラインの出るワンピース。
素敵な人だった。あのワンピース……誰に見せるのかしら。とても、綺麗だわ。楽しかった。
だけど、彼女の事が誤解だったとしても、私が振られたという事実は変わらなかった。
『ごめん』そう言った彼の声が頭に響く。
そうなると、彼は誰が好きなんだろう。俊之さんは、知ってると……
…………何かが引っかかる。俊之さんが私に言った言葉。
えっと……
『君が、したことは彼がしたことに匹敵するかそれよりひどいかもしれないよ? 』
『男と、一晩泊まったんだ。君の意思でね』
『大人の男女が一晩一緒にいて、何もなかったと君なら思うかい?』
『君も、その日に俺のとこに来た』
私が、俊之さんの元へ行くことが、なぜ吉良くんにとって“ひどい”事になるのだろうか。
彼は、あの潔癖体質で“知り合いと関係のあった女性はダメ”
つまり……私が、湊ちゃんを見て誤解したように、彼も、私を?誤解じゃない。私の場合は。抱かれても……俊之さんとそうなってもいいと。甘えてしまった。俊之さんに。
『それより酷いかもしれない』“それ”とは……湊ちゃんの事は誤解だった。だけど、私のは誤解ではない
だから、俊之さんは、私に何もしなかったってこと?
『同じくらい……いや、それ以上かもしれないなぁ……彼の事も……好きなんだ』
俊之さんはそう言った。繋がった気がした。
『分からないものなんだよ。相手に聞かないと何があったのか……なんて。……それに、それを聞いて、嘘をつくような男なのかい?
』
『いいえ。いいえ、俊之さん。彼は、ちゃんと向き合ってくれると思います』
答えは……あった。もう、そこに。そして、私の中に。
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