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第52話 side reika
気づけば、話しも出来ないままに、その週が終わろうとしていた。
吉良くんは今日は直帰。私は会社。また、来週かな。そう思って帰路に着いた。
着信の通知を知らせるライトが点滅しているのに気付き、スマホを確認した。
……吉良くん……。もしかして、予定が空いたのかしら。少しの期待と、大いなる緊張。震える手でコールした。
「もしもし? 吉良くん。どうし……」
『どこ!? 今、どこ!? 』
物凄く慌てた声。どうしたのかしら。
『動くな、そこ。そこにいて。すぐ行く』
そう言って、すぐに切れた。呆気に取られはしたが、いつか彼と見た大木の周りを囲うように作られたベンチに腰かけた。話を聞いてくれる……のよね?
吉良くんは、清水部長の所だ。そこからだと……どのくらいでここへ到着するか時計を見て計算する。
「麗佳! 」
呼ばれた方向に彼の走ってくる姿に。私も立ち上がった。走ってきた勢いのままに、彼の腕の中に包まれる。その勢いに後ろに倒れそうになるのを、彼がまた支えてくれる。
……え……
何?
走ってきたせいなのか、彼の激しい鼓動と呼吸で上下する胸の振動が伝わる。
何が起こっているのか理解するまでに、時間がかかったが
彼の呼吸が整うまで待っていた。
それなのに、一向に離そうとしない彼に
「ちょっと、吉良くん! 」
「あ……ごめん」
「話を聞いてくれるんじゃないの? 」
……その為に来たのよね?でも、何があったのかしら。でも、その前にずっと思っていた、彼の言動を注意した。
思わず言ってしまった。湊ちゃんが言ってた『イタリア』こうやって他の女性も抱き締めたものなら、大問題だ。
「麗佳は、例外じゃないよね」
そう言って、また抱き締めようと腕を伸ばしてくる。それを避けるように、ぐいぐいと彼の胸を押し返した。だけど、彼の力に敵うわけもなく、やがてされるがままに……脱力した。
その瞬間、彼の腕に今まで以上に力が込められた。
「麗佳……好きだ。もう、好きだ! 好きだ! 好きだ……」
更に、強く、強く抱き締められ、軽く足が浮いた。恥ずかしすぎて、彼を押し返す。
「ほら、そういうのも……」
と、文句を言おうと口を開くと
「だから、好きだって。好きなの、麗佳が。俺の彼女に……」
そこで、彼が私の顔を見たまま停止した。
「どうしたの? 」
「えー……麗佳……さん? 」
「何かしら」
「僕と、付き合って貰えませんか? 」
「……」
僕?
「あの……」
ふっと力が抜けて、微笑むと
「本当、軽いわね。」
そう言った。この自信たっぷりの顔。大好きだわ。ああ、それに……ほら。当たった。やっぱり。彼も私を好きだったんじゃない。何だ、良かった。じゃあこの……
「え? 」
少しづつ……彼の言葉を理解する。
「……うん」
「えっと……私……今……」
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