第52話 side reika

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「お待たせ」 そう言って、より軽薄そうな、それでいて素敵な姿で出てきた彼に、いちいち心臓が反応する。私服姿は、特別感が凄い。 「ねぇ、これって……あなたが? 」 その絵を指して尋ねた。 「あー、うん」 バッグからスマホを取り出すと、画像を開いた。思い違いでなければ、いつか二人で見たあの景色。この、絵と同じ。 それに気づいた彼が、顔を寄せる。その距離に認識する。もう大丈夫なのだと。 「あー……なかなか近いな。やっぱ街並みは適当なのがわかるなぁ」 「なぜ……」 「……特別な、景色だったから」 「それって」 「うん」 彼が、手を伸ばしスケッチブックを取ると 私に渡す。見せて貰ってと、湊ちゃんが言っていた。 そこには……私。笑った顔。愛想なしの私なんて、滅多に笑わないのに。 「私……」 「うん」 「私、こんなに……」 「もっと綺麗よって? 」 「もう! 」 彼に抗議の為に少し顔を後ろに向けようとした。 一瞬。一瞬の出来事だった。彼のからかう言葉に、絵の方が素敵だと……言おうと…… 目の前に、彼の顔。少しの風が届く。 唇に柔らかい感触。驚いて、目を閉じる事も出来なかった。 「行こう、麗佳んち。まだ、話出来てない」 「あの……先に話……じゃないのかしら」 「あー、そんな意見もあるかもしれんね」 「あなたって……」 「したかったんだもん」 ……だもん。って…… 再び繋がれた手は、絶対私の方が熱いはず。この人は本当に……触れない。から、触れるようになると、こうなのかしら。緩んだ顔で、そう思った。
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