第52話 side reika

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私の家に入ると 「えっと……で? なんだっけ、話」 軽い。とことん軽い口調で彼がそう言った。 「あの、金曜日の話を……」 「あー、それ。もういいや」 「はい? 」 「知ってる。上で、言います」 「何? 」 「好きです」 「軽いー」 「軽くない。相当、悩んだ。それに……麗佳が好きだって気持ちが……治してくれた」 そう言って、繋いだ手を少し持ち上げた。 「好きだって、言ってくれて嬉しかった」 「ごめん。って言ったじゃない、あなた。振ったわよね? 」 「へ? いや……それは……そっちへ行かせちゃっての……ごめん。だ」 そっち?ああ、俊之さんの方へ?知ってたってこと? 「いいんだ。過去は。だろ? 」 「そうね……今は……」 と、なると……話すことが無くなる。 「コーヒーでもいれましょうか? 」 私の問いに答える事なく近い距離で目が合う。とても、近い距離で。より一層近づく。今度は、唇が触れる前に目を閉じる事が出来た。 あ、待って……そうだ。いつか、宮司さんに言われた言葉を思い出した。 「ま、待って! 」 「何?」 不機嫌に眉を寄せた彼に言った。ビニール袋を取り出し、ダストボックスに重ねた。 「えっと、トイレあっち! お風呂と洗面所はそっち! それで、これ! 」 彼にそのダストボックスを渡した。 「大丈夫、吐いても。ね? 」 そう言うと、驚いていた彼が笑いだした。 そして、また……唇を重ねる。今度は、深く……深く……。 ようやく唇を離すと 「大丈夫。もう、どこでも触れる。だから……」 そう言ってキスを深めながらも器用にボタンを外していく。どちらも、おざなりにならないその様子に、思わず 「凄いわね」 と、言ってしまう。 「何、やってみたいの? 」 「ええ、ちょっと」 また笑う彼に、こちらから唇を合わせ、彼の服を…… 「口、止まってる」 本当だ。難しい。 「今度は、手」 「難しいわね……慣れすぎじゃない? 」 そう言うと、今度は、彼が固まった。 「ほらぁ、微妙な空気になっただろ。慣れてるわけないだろ、何年ブランクがあると思って……」 そこまで言うと彼は髪を自分の髪をバサバサと乱した。 「あー! もう! 」 そう言って、そっぽを向いた。まずかったかしら…… 「せいぜい3年程でしょう? 私なんて……5年以上……」 「え? 」 「ええ、ブランク。正式な日数出しましょうか? 」 彼が再び固まる。 「いや……いいです」 それから、大きな大きなため息をついて、倒れ込むように、私に身を預けた。
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