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気持ち良さそうな寝息を立てる彼を起こさないように、そっとベッドから抜けた。彼がここにいるだけで、幸せだった。
緩んだ顔で、彼の顔をじっくりと見る。綺麗な顔……眉の形も、長い睫毛も、目も口も。そして、それらの配置も。耳の形に至るまですべて。
高い鼻。先がちょっと、つんってなってる……シリコン?起きないのをいいことに、摘まんでみた。……軟骨だわ。
彼にいたずらしても、少し顔が動いたくらいで起きなかった。いつか、横にいた時は一睡も出来なかった。
今は……。
緩んだ顔で立ち上がった。怠い身体に反して、心はスッキリしていた。この怠さは愛された証だから。
思い出しては、赤面する。近づくどころか、彼は中まで……そこまで考えて、伏せた。いや、ちょっと、下品だったわ、今の発想は。
朝から何を考えているのかしらと、もう一度赤面した。
服を着替えると……もちろん、あのワンピース。汚さないようにエプロンをつけた。といっても、いつもの常備菜にご飯を炊いて、お味噌汁を足しただけ。
全く起きない彼を起こしに、ベッドへ向かう。……キスで起こす。……とか……
ダメだ。顔が緩みすぎて、唇がキスの形になかなかなってくれなかった。ようやく、そっと頬に、それから長めの前髪を上げて、おでこにキスをする。
「……ん……」
片 目を細く開けた彼の頬に、もう一度キス。
「……おはよ」
可愛いすぎて、気絶しそう。
「おはよう、お寝坊さん」
もう一度、おでこにキスして立ち上がりキッチンへと。
ベッドに腰掛けたまま、ボーッとした彼に笑みが溢れる。開いてない目、ほんの少しついた寝癖。
初めてパンダを見たときだって、ここまでの気持ちにはならなかった。
……朝、弱いんだ。可愛い。抱きついて、撫で回したいくらい。
「朝食、できてるけど? 」
もう、昼食に近い時間だったけれど。
「……食べる」
そう言って立ち上がった彼に歯ブラシを持たせて、洗面所へ。
「顔洗って。ね? 」
そう言うと、頷いた。ご飯とお味噌汁をよそって並べる。……お茶碗とお椀、買い足そう。一応、二個づつはあるけど小さい。
……ペアで。それだけで、胸が高鳴った。
「麗佳、タオル~」
「ああ、はい」
洗面所へ入るとタオルを手渡す。
二本並んだ歯ブラシ。駄目だわ。今日、緩みっぱなし。
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