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結局その日はだらだらと、いや、ベタベタと。いや、ベッタリと、麗佳の家で過ごし、夕食を外で済まして俺の家へ向かった。
一緒に風呂に入ると
「麗佳ぁ、どっちがいい? 」
薄手のシャツと少し厚手のシャツを用意して聞いた。
「ん~、どうだろ。厚手かなぁ? まだちょっと朝は寒いものね」
「おっけ」
厚手のシャツを麗佳に着せる。何かを考えてるのだろう彼女の顔。
「ん? 何? 」
「今、どんな状態? 」
「え? 彼氏んちに、お泊まり。一泊目」
明日も泊まるしな。
「どうして、昨日急に好きだとか言い出したの? 」
「やっと、正気に戻ったんだよ」
「……お帰りなさい」
過去からって分かってるよな。
「……ただいま」
「ところで、いつから好きなの? 」
……ああ、確かに。
「わかんないんだよね。それが。たぶん同行した日かな? 手、触ってきた時」
彼女の手を繋ぎ、ベッドに座らせた。この手が、俺に触れた……あの時。
「そっか」
「ごめん、待たせて」
「いいの、どのみち、出来なかったと思うわ。彼氏いない歴を更新するだけ」
いや、出来ただろう。麗佳さえ、受け入れたら……凄い彼氏が。
「今年は雌ヒョウのように? じゃなかった? 」
「それなんだけれど、どうして私ってこんなに彼氏出来ないのかしら? 」
「いや、出来ただろ」
「出来なかったでしょ? 5年も」
「……教えない」
教えてたまるか。
「ということは、あるのね、欠点が」
「……ない」
「教えて、直すから」
「……教えない」
「ということは、あるのね、欠点が」
「……ない」
「ちょっと! もう! 」
ない。欠点なんて。完璧だ。
「おいで」
隣にいる彼女にそう言った。
「俺にとっては、長所だよ」
他の男をスルーする、塩対応。
「それに……」
「それに? 」
「出来たんだから、いいだろ? 彼氏」
「じゃあ、もし別れたら、教えてくれる? 」
そんな事、言う。余計教えねーわ。
「その時に、吉良くんの欠点も教えてあげるわね」
あるのか……俺にも。
「軽薄なところとか、言うんだろ? どうせ」
「うーん……どうかしら、ね」
彼女は、綺麗な顔で笑った。
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