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「でもそうねぇ。いきなり呼び捨てで、いきなり抱きついて、その日に泊まる……うーん……重厚とは言えないわね」
「……ごもっともです」
「あなたの事を好きだと言ったのは、少し前でしょ? だから、昨日の段階で私もまだ好きだとは限らないじゃない? 先に、こちら側の意思確認が必要じゃないかしら」
「心変わりすんの? 早くない? 」
「……まぁねぇ、素敵な男性がまわりにいるんだもの」
そうだな、清水部長だもんなぁ。その通りだ。
「……ごめんなさい」
「本当にね」
「待たせて、悩ませて、ごめん」
「本当にね」
「……だから……」
「まぁ、これくらい意地悪いいでしょ? 」
「うん」
「どうせ、過去と向き合う時にハグとか添い寝くらいはしたのでしょう? 」
「……」
……俺、確かにハグはした。添い寝ってか、床だけど。
「冗談だったのだけど……」
「……」
「色々、反省してくれる? あなた、色々駄目よ」
アドバイス。まあ、23歳と26歳では多少、違うかもしれない。だけど……
「俺の事……どう思ってますか? 」
「勿論、軽薄だと思ってます」
「麗佳……さん」
「馬鹿」
今の“馬鹿”は、可愛すぎる。ので、触ろ。どこを取っても、綺麗だとしか言いようがない、感嘆のため息しか出ないような彼女の身体に触れる。止められない。触っても、触っても。
何回目かのキスで、目を閉じなくなった彼女に気づく。
「……何か、別の事考えてる」
「……うん……」
そう言った彼女に、小さなため息を吐くと
彼女の肩に、脱がせたシャツを掛けた。
そうだな、一度、ちゃんと聞かないと。ベッドで聞くのもどうかと思うけど。
「言って、聞くから」
「俊之さんと、何かあった? 」
「……何も。ちょっと、壁ドンしちゃっただけ」
「彼の事が好きなのね」
元カノと何かあった?ってニュアンスで彼との事を聞かれる。
「……えっと……んー……」
好きだな。めちゃめちゃ。
「いいの、素敵な人だもの」
いいの?それ……は……ちょっと方向が違う気がする。
「ねぇ……あのさぁ」
「もういいの、お互い様だから」
「お互い様? 」
壁ドン?したの?されたの?
「本当、あなたって色々駄目よね」
最後に駄目出し。まあ、その通りだな。
そう言えば……
「ねぇ、ずっと聞きたかったんだけど……」
こっちも、今更だけど。
「あの日……イヴの日、何で泣いてたの? 佳子ちゃんと」
「ね、……猫ちゃんがね」
吹き出した。
「ああ、そっか」
「好き過ぎて、泣けたの」
「……そっか」
「恋愛スキルは売ってないんだもの」
「……いらないよ。実地でいこう。ぶっつけ本番」
「あなたが言うと、やらしく聞こえる」
「やらしい意味で言ってるもーん」
「軽い」
そうは言っても、シャツを再び取り払おうと手を掛けた。
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