第55話 side kira

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「でもそうねぇ。いきなり呼び捨てで、いきなり抱きついて、その日に泊まる……うーん……重厚とは言えないわね」 「……ごもっともです」 「あなたの事を好きだと言ったのは、少し前でしょ? だから、昨日の段階で私もまだ好きだとは限らないじゃない? 先に、こちら側の意思確認が必要じゃないかしら」 「心変わりすんの? 早くない? 」 「……まぁねぇ、素敵な男性がまわりにいるんだもの」 そうだな、清水部長(ボス)だもんなぁ。その通りだ。 「……ごめんなさい」 「本当にね」 「待たせて、悩ませて、ごめん」 「本当にね」 「……だから……」 「まぁ、これくらい意地悪いいでしょ? 」 「うん」 「どうせ、過去と向き合う時にハグとか添い寝くらいはしたのでしょう? 」 「……」 ……俺、確かにハグはした。添い寝ってか、床だけど。 「冗談だったのだけど……」 「……」 「色々、反省してくれる? あなた、色々駄目よ」 アドバイス。まあ、23歳と26歳では多少、違うかもしれない。だけど…… 「俺の事……どう思ってますか? 」 「勿論、軽薄だと思ってます」 「麗佳……さん」 「馬鹿」 今の“馬鹿”は、可愛すぎる。ので、触ろ。どこを取っても、綺麗だとしか言いようがない、感嘆のため息しか出ないような彼女の身体に触れる。止められない。触っても、触っても。 何回目かのキスで、目を閉じなくなった彼女に気づく。 「……何か、別の事考えてる」 「……うん……」 そう言った彼女に、小さなため息を吐くと 彼女の肩に、脱がせたシャツを掛けた。 そうだな、一度、ちゃんと聞かないと。ベッド(ここ)で聞くのもどうかと思うけど。 「言って、聞くから」 「俊之さんと、何かあった? 」 「……何も。ちょっと、壁ドンしちゃっただけ」 「彼の事が好きなのね」 元カノと何かあった?ってニュアンスで彼との事を聞かれる。 「……えっと……んー……」 好きだな。めちゃめちゃ。 「いいの、素敵な人だもの」 いいの?それ……は……ちょっと方向が違う気がする。 「ねぇ……あのさぁ」 「もういいの、お互い様だから」 「お互い様? 」 壁ドン?したの?されたの? 「本当、あなたって色々駄目よね」 最後に駄目出し。まあ、その通りだな。 そう言えば…… 「ねぇ、ずっと聞きたかったんだけど……」 こっちも、今更だけど。 「あの日……イヴの日、何で泣いてたの? 佳子ちゃんと」 「ね、……猫ちゃんがね」 吹き出した。 「ああ、そっか」 「好き過ぎて、泣けたの」 「……そっか」 「恋愛スキルは売ってないんだもの」 「……いらないよ。実地でいこう。ぶっつけ本番」 「あなたが言うと、やらしく聞こえる」 「やらしい意味で言ってるもーん」 「軽い」 そうは言っても、シャツを再び取り払おうと手を掛けた。
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