第56話 side reika

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手を繋いでぶらぶらと目的なく買い物を楽しんだ。……おそらく、彼はまだ、女性に対して完治していないのだろう。どの程度なのか分からないけれど。 私だけが特別であることはわかる。繋いだ手も、キスも私にだけ。 GODIVAのショコリキサーを歩きながら飲む。甘いものが苦手な彼でも飲めるかと、ダークな物にしたけれど…… 私の手から、取って一口飲む。 「旨いね。あ、後からきた。甘いの」 その甘さに眉を寄せる。この人は、こんなに甘い顔をして、甘いのは苦手なのか。 小休憩。海沿いの柵に手を置いて、風を正面から受ける。もうすっかり季節が変わっていた。結構歩いた。 「足、痛くない? 」 「ええ、大丈夫」 他愛もない話をしながら、再びぶらぶらして、お互いに似合う服や、着てほしい服なんか言い合って過ごした。 彼との時間はとても楽しかった。どれだけ私が悩んでも一緒に考えてくれたし、私の足を気遣って、適度に休憩を挟む。 とってもスマート。でも、そのスマートさが、きっと自然な彼なのだ。……モテるだろうなぁ、この人。そして、モテてきたのだろうなぁ、この人。しみじみとそう思った。 金曜の夜からずっと一緒にいる。なのに、まだ一緒にいたいと思う。 緊張もするし、恥ずかしい。なのに、まだ一緒にいたいと思う。 「蕎麦でも食べて帰る? うどん? パスタ……はこの前食べたな」 車に乗ると、彼はそう言った。 「食器うちに運んでもらってもいい? 」 「ああ、そうだな。重いな。じゃあ、食べたら麗佳んち経由で俺んちね」 そのまま帰ってもいいのだけれど、やっぱり一緒にいたかった。付き合いたてってこんなものなのかしら。 今までは…… 「……また何か考えてるな? 」 「ええ」 「何? 」 「……えっと……」 「向き合うんだろ? 」 「……幸せだなって」 「ああ、はは。そういうのは、もっと言って? 上がりますので」 それから 「うん、幸せだ。俺も」 そう言って 「ちゅーは帰ってからにします」 と、言った。照れもせずに。彼は言葉も、スキンシップも人一倍コミュニケーションを取る。彼なりの向き合い方なのだろう。 それにいちいち……緩んでしまう顔を引き締めるのが、少し大変。 「で、蕎麦? うどん? 麗佳、メンクイだからね~」 「どうしようかしら、悩むわ」 「はは、どっちでも。今日食べなかった方は次食べよ」 ……次。そうか、次の約束。当たり前みたいに二回……三回と続いていく。 「長野とか、香川とか行ってもいいね」 「麺の為に? 」 「うん、色んなとこ行きたい。麗佳と」 そうか、これからずっと、今だけでなく、何度も……なんて。 やっぱり、顔はゆるんでしまう。
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