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手を繋いでぶらぶらと目的なく買い物を楽しんだ。……おそらく、彼はまだ、女性に対して完治していないのだろう。どの程度なのか分からないけれど。
私だけが特別であることはわかる。繋いだ手も、キスも私にだけ。
GODIVAのショコリキサーを歩きながら飲む。甘いものが苦手な彼でも飲めるかと、ダークな物にしたけれど……
私の手から、取って一口飲む。
「旨いね。あ、後からきた。甘いの」
その甘さに眉を寄せる。この人は、こんなに甘い顔をして、甘いのは苦手なのか。
小休憩。海沿いの柵に手を置いて、風を正面から受ける。もうすっかり季節が変わっていた。結構歩いた。
「足、痛くない? 」
「ええ、大丈夫」
他愛もない話をしながら、再びぶらぶらして、お互いに似合う服や、着てほしい服なんか言い合って過ごした。
彼との時間はとても楽しかった。どれだけ私が悩んでも一緒に考えてくれたし、私の足を気遣って、適度に休憩を挟む。
とってもスマート。でも、そのスマートさが、きっと自然な彼なのだ。……モテるだろうなぁ、この人。そして、モテてきたのだろうなぁ、この人。しみじみとそう思った。
金曜の夜からずっと一緒にいる。なのに、まだ一緒にいたいと思う。
緊張もするし、恥ずかしい。なのに、まだ一緒にいたいと思う。
「蕎麦でも食べて帰る? うどん? パスタ……はこの前食べたな」
車に乗ると、彼はそう言った。
「食器うちに運んでもらってもいい? 」
「ああ、そうだな。重いな。じゃあ、食べたら麗佳んち経由で俺んちね」
そのまま帰ってもいいのだけれど、やっぱり一緒にいたかった。付き合いたてってこんなものなのかしら。
今までは……
「……また何か考えてるな? 」
「ええ」
「何? 」
「……えっと……」
「向き合うんだろ? 」
「……幸せだなって」
「ああ、はは。そういうのは、もっと言って? 上がりますので」
それから
「うん、幸せだ。俺も」
そう言って
「ちゅーは帰ってからにします」
と、言った。照れもせずに。彼は言葉も、スキンシップも人一倍コミュニケーションを取る。彼なりの向き合い方なのだろう。
それにいちいち……緩んでしまう顔を引き締めるのが、少し大変。
「で、蕎麦? うどん? 麗佳、メンクイだからね~」
「どうしようかしら、悩むわ」
「はは、どっちでも。今日食べなかった方は次食べよ」
……次。そうか、次の約束。当たり前みたいに二回……三回と続いていく。
「長野とか、香川とか行ってもいいね」
「麺の為に? 」
「うん、色んなとこ行きたい。麗佳と」
そうか、これからずっと、今だけでなく、何度も……なんて。
やっぱり、顔はゆるんでしまう。
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