第56話 side reika

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「食器、ここ置くよ」 私の家に着いて、そう言った。 「あ、うん。明日帰ったら洗っておくから、またここで食事を……」 「うん」 しばらくそこで抱き止められ……思うままにキスを交わす。 「出掛けるのもいいけど、家もいいなぁ」 そう言って微笑む彼と、手を繋いで部屋を出ると、彼の家へと向かった。 「明日仕事かぁ、早いもんだなぁ。休みなんて」 「そうね」 報告を……、佳子ちゃんやるなちゃんに、こうなった報告をしないと。……物凄く恥ずかしいけれど。 やっと、恋人が出来たこと。素敵な、素敵な恋人が。きっと自分の事のように喜んでくれる。あの二人なら。 ────朝、同じベッドで起きて、同じ食事を取って彼の家から、一緒に出勤する。仕事のある日は、さほど朝が弱くはなかった。無意識のオンオフ切り替えなのかしら。 手を繋いで。ずっと……会社の最寄り駅に着くまでに、そっと離した。流石に大人だし。恥ずかしい。それを彼がもう一度繋いでくる。慌てて離そうとする私に 「ヤバい、マジ離れない」 真顔で言うもので、そしてずっと繋いでるもので 「嘘!? 大友くんと、席変えて貰う!? 」 慌ててそう言って気づいた。……そんな訳ない。それに、彼も震えるように笑ってる。からかわれたことに、じとっと睨むと 「あ、顔に……“しました”って書いてるよ」 「嘘!? 何個!? 」 書いてるわけ、なかった。恥ずかしくなって、やり返した。 「あなただって、付いてるわよ。口紅」 玄関で、何回もキスして出てきた。慌てて口を拭う彼に 「ま、常に付いてそうな顔だから、違和感ないんじゃない? 」 と、言った。今度はじとっと睨まれたけれど、顔がゆるむ。 そんな彼とロッカールーム前で別れた。一人になったのをいいことに、思いっきり顔をゆるめた。 こんな日が毎日続くと、表情筋がおかしくなってしまうのではないかと心配するほどに。 フロアへ入ると結城くんと、佳子ちゃん。それから、前の席には、私の彼。 うーん……二倍恥ずかしい……。
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