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第57話 side kira
幸せな微睡みの中で、彼女に聞いた。
「明日、どっか行く? 」
「あ、お買い物行きたい! 」
「あー、どの辺? 」
「何でも売ってるとこ」
「了解、車出す」
「ありがとう」
「だから、起こしてね」
「ふふ、わかった。お休みなさい」
「お休み」
そう言って、麗佳にキスして目を閉じた。
────
──
……キス。いい匂い。麗佳の……。ぐぇ。
「荒い」
何か痛いの落ちてきた。
「起きないんだもの」
……朝から元気だな、麗佳。顔洗って、歯磨きして。おお、今日は洋食。
オムレツに“love”の文字……は、なかった。そこは、いいんだな。
気づけば目の前に麗佳の顔……ボーッとしすぎてたらしい。まあ、せっかくだからキス。
俺は、朝が弱い。急かされて、出掛けた。運転中に繋いだ手を咎められて、しぶしぶ外す。仕方なく、彼女の手の甲にキスして、前を向いた。
あ。もう一度彼女の方を向くと、そっと引き寄せて……せっかくだからキス。それも咎められて……大人だな。
昼間の車内はガラスが反射して案外見えないんだよ。
「買い物行くけど……あれだけは絶対嫌だからね。いくら“やってみたい”って言っても」
念のため、買い物ということで断りを入れておく。
「ペアルック。なんだ、ほらリンクコーデ……とかも」
「あ、でもあれならいいかしら? 」
「どれでも……嫌だけど……」
「パジャマ」
「えー、麗佳、シルク100とか着そうじゃん」
「あなたも着たら……あはは、もうダメ。似合わない。チャラシルク」
チャラシルクって何ですか。蚕の種類ですか。……言うようになってきたわ。
「パジャマいりませーん。どうせ脱ぐし?
」
からかうつもり……が
「それも、そうね」
こういうのは動じない。チラリと麗佳を見ると、少し残念そうで……したいのかなぁ。ペア。
ペアなぁ。二人合わせて“love”になるトレーナーが浮かんだ。あー……厳しい。でも、俺しか付き合ってやれねえんだよなー。
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