第57話 side kira

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その週、久しぶりに男3人で昼飯に行った。 「お前、幸せそうだな」 座るやいなや、大友がもう一人の男にそう言った。 「……そうだな」 それを、抑揚なく答える。 「一緒に住んでるからねぇ」 ニヤッと笑ってそう言った。 「ああ、やっぱり? 」 大して驚かずに、そう言った大友。こいつは妙に鋭い。 「……」 「出てる。色々」 この、AIから何が出てるんだろう。そうか 「薔薇色? 」 そう茶化した。 「……良かったな。でも」 大友が穏やかに言う。 「ああ。そのうち、いい報告が出来ると思う」 ……結婚ってことか? 「元々すんだろ? 」 「まあ、そうだな」 「俺もするかなぁ」 そう言った大友の顔を二人で見た。え? 「誰と」 「彼女」 いんのかよ、それほどの彼女が。 「まぁ、そうだわな。で、どんな? 」 「……」 あれ……か? 「……結婚……してたって言ってなかったか? 」 「まぁ、ちょっと……色々あって」 「薔薇色? 」 珍しく、結城が言った。 「はいはい」 大友は、サラッと流す。こいつ、ほんとに自分のことは喋りもしないし、出さないんだよな。 「飲みに行くか? 久しぶりに」 ランチじゃ足りねぇな。面白そうだ。 「だな。お前の話も聞きたい」 んで、鋭い。 「あー……」 「薔薇色? 」 またしても結城。 「お前……何か変わったな」 そう言うと、目だけで返事した。 「お前もだろ」 大友にそう言われ、まぁそうか。 「もういっそ、みんなで飲みに行くかー」 いつかみたいな提案に 「彼女、今飲めない」 ……ああ、佳子ちゃん、まだギプス。 「こっちは、元々飲めない」 飲ませたく、ないしな。笑って言った。 「オフィスラブ推奨なだけ、あるよね。うちの会社」 「へ? 推奨してんの? 」 「ああ、社長が社長だからね……」 「……確かに」 社長が、社長だ。奥さんが社内にいる。 「とりあえず、部全員では佳子ちゃんの快復待って5月くらいにすっか」 「だな」 今日は一気に気温の上がった暖かい日だった。 「……仕事したくなくなる陽気だな」 大友の意見に賛同しながらも、オフィスへ戻った。 廊下を歩く、佳子ちゃんを見つけると追い付く結城。そんな二人を俺達は追い抜いた。 ……何だ、あいつ。全く気にしてないな。オープンだねぇ。 顔が無表情で、笑ってるよ。
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