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「今週、どうだ? 」
週始めに大友がそう言って、その週の終わりに飲みに行った。
3人でガヤガヤとした呑み屋で。まあ、俺達だけの時は女性客が少ないような店がいい。いつも通り大友と俺が話すのを結城が無表情で聞いていた。
ここ最近の事情や、来月からの会社の事情。上層部からの情報によると、営業にも数人入ってくる。
「もう、いいんだけどね」
ほぼ、男ばかりの採用に、気を遣われてるのがわかる。今月の頭に、上層部との面接で異動が決まった人もいるのか。俺たちはこのまま営業だ。
「佳子ちゃん、辞めないよね? 」
「辞めない……はずだけど……」
「おお、そっか。新卒は事務もいるだろ?
……結婚したら辞めたり……」
「結婚は11月だ。まだまだ」
「決まったのか? 」
「ああ。11月26日。先週、向こうの親に挨拶に行った」
「……仕事早いね。喜んでただろ? 佳子ちゃんも、ご両親も」
「……ご両親はな。本人は……」
微妙な言い方に何かあるのが分かる。
「……結婚したがってたんじゃないの? 彼女」
それで泣いてたし。
「全然。挙式もしなくてもいいって……まあするけど」
「……意外だな」
「さっぱりしてる。全然……楽しみにしてる感じはない」
「おお、それも意外だな。……何? 不満?
」
ドレスとか、わくわくして選びそうなのに。
「準備で喧嘩になる人の気持ちはわかる」
「あはは! お前一人でやきもきしてんだ?
」
「……よく、わからない。何考えてんのか」
「……聞けばいいじゃん」
「まあ、な。まあ、いいか。ってなる。彼女が横にいるだけで。……で、何も進まない」
佳子ちゃんがいたら、まぁ、いいか。って……。こいつ、結構な事言ってるけど。でも、こいつに比べたら佳子ちゃんはわかりやすいけどなー。
「お前の方が結婚したいんだ、それ」
「たぶん、そうなんだろうな」
「……一緒に住んでるんだろ? 」
「明日、病院行ってギプス取れたら自分のマンションに帰るってさ。……ああ、今日も……あっち」
その時、結城のスマホからメッセージの通知音がした。それを見てため息を吐く。珍しく、わかりやすく。そして、スマホを置くともう一度ため息をついた。
「佳子ちゃん? 」
「ああ。明日の診察は友達に送って貰うって……そのまま、友達の二次会の打ち合わせ。っていう連絡事項」
「……あれか」
「あれだ」
「あれってなんだよ」
大友の質問に俺が答える。
「年明けにやたら、ランチ行ってた男知らない? 」
「ああ、あれか」
「気あるんだよね。向こうの男。つか、佳子ちゃんも……付き合うって言ってた。……ギリギリ阻止したよねー」
「……で、ため息? 」
「それもある。けど……何だろうな……来月で向こうのマンション引き払うんだけど……それまで向こうに居たいって……」
「お前といると、疲れんじゃね? 」
「マリッジブルー? 」
「ご両親に一緒に住む許可貰ったら、これだもんな。……交際期間がないから……って。わからないな、女性は」
「言っても、あと1ヶ月もしたらずーっと一緒だろ? いんじゃないの? 」
「……温度差が……」
「あーお前、初めてだもんな。自分が好きになんの」
「佳子ちゃんは、なんだかんだ言っても……常に彼氏いた人だからなー」
「悩め、悩め。ようやく、ここまで来たんだ。お前は……」
「そうそう、口に出せ。話し合って、気持ちぶつけて、向き合え」
「人間への第一歩! 」
「明日はもれなく、一日モヤモヤするやつだな」
「結婚前に羽目外すやつ」
そうからかうと
「……おい」
睨まれた。何かある事はないだろうし……。
「とりあえず、おめでとう! 俺たちの中で一番乗りだな」
一番、縁遠そうなやつが。不思議なもんだな。
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