番外編その2

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駅からの距離、セキュリティ。色々考えた結果、麗佳の家へ俺が行くことになった。 麗佳のご両親から、同棲の許可もその場で 貰えた。俺の方にあった電化製品なんかはほぼ処分かな。服もそんなにある方じゃないし。業者を呼ぶほどでもなく引っ越しは終わった。 リビングには、麗佳の希望で、俺の描いたあの景色の絵が飾られた。正直、そんなに上手くないんだけど。あの時の気持ちが見る度によみがえって、なんか、いいんだよね。 「さて」 24時間一緒っていう表現は大袈裟なようで大袈裟じゃない。今日から始まる、二人での生活が。 「もう、終わったの? 早いわね」 「結局あんまりないからなぁ。ちょこちょこ運んでたし」 近辺の駐車場探しにちょっと苦労したくらいだ。順調。全てが。 「何、しますか? 愛でも確かめ合う?」 「案外、日用品が切れてて……買い出し行きたいの」 スルーされる。急にリアルだな。 「車、出す?」 「いいえ、持てるくらいだと思う」 「俺の手、こっちしか使えないけど?」 片手をヒラヒラと振って見せる。反対の手は、当然繋ぐから空けておく。 「いざとなれば、荷物を優先してくれる?」 ちぇ、何だよ、急にリアルだな。そうだな、今日から一緒にリアルだ。生活するって、そういう事なんだろ。 だけど、今日のこの日は忘れたくない。麗佳が俺に好きだって言った日も、俺が麗佳を好きだって言った、付き合った日も。今日のこの日も。これから、そんな日が増えていくとしても。 そうは言っても、結局、片手で持てる荷物を下げて帰って来た。
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