番外編その2

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「いいね、ここ。店も近い」 「そうなの。スーパーもコンビニも近いでしょ? お陰で意識しないと運動不足になっちゃうわ」 「散歩でも行く?」 俺がそう言うと、目をキラキラ光らせた。 「良いわね! 着替えてくる!」 ……え?着替える?散歩行くのに? 部屋から出て来た麗佳は、今からランニングでもしそうな……スポーティーな格好。俺の服装を見てキョトンとした彼女に えーっと…… 「あ、ごめん。俺も着替えるわ」 そう言った。何で謝らないとならないんだ。俺の散歩の概念が、おかしいのか? スウェットなら、あったよな。とりあえず慌てて着替えた。 「お待たせ。どんくらい歩くつもり?」 念のため聞いた。麗佳のただの散歩ではない出で立ちに。 「二駅くらいかなぁ」 ……この路線なら10キロ弱かってとこか? 「往復ね」 20キロ! 「さ、行きましょうか」 「はい」 この人、こんな生活してんの?……努力してるって……これ!?はぁ、長生き出来そう、俺。 だけど、結構、いいな。気分も良好。上気した頬も纏められた髪も、滲む汗も何ともセクシー。色々、上々。 だけど、適度に体力は残したいところ。初日だしな、今日。 「ねぇ、今日からずっと一緒ね」 前を見て歩きながら、弾んだ息で麗佳が言った。 「そうだな」 「何をするのも、一緒ね」 今度は、俺の方を見て微笑んで言う。 「そうだな」 俺も彼女の方を見て笑ってそう言った。こんな事で泣きたくなる自分に情けないけど……今、幸せMAXだな。 ん?……何をするのも?うっわぁ、早く帰りてぇ。 一駅電車……乗ったりしないよな。いや、誰にも見せたくないな。 頑張るかぁ。 「何が一番簡単? 料理。片付けとか含めて」 「あまり油っぽくないパスタかしら」 「宜しく。手伝う」 「どうしたの?」 「何をするのも、一緒。だから、早く帰ろう?」 「ふふ、これからも、よ?」 「だからこそ。初日が肝心」 「あ、引っ越し蕎麦じゃなくて良かった?」 ……何でもいい。ものすっごい、どうでもいい。だけど、作って貰うのに、それはない、か。 「麗佳と一緒なら、どちらでも」 結局のところ、これだな。時々、忘れそうになるけど……俺は彼女より年下だ。色々負けてられないな。体力も。 麗佳を知れば知るほど、そんな反省も……あったり、なかったり。
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