11067人が本棚に入れています
本棚に追加
──
「予約だけ、先にしとこっか。こうしてても時間は過ぎて行く訳だし」
雑誌をペラペラ捲りながら彼が言った。
「何の?」
「結城がさぁ、希望があるなら式場の予約は早い方が良いって。人気のある式場とかって埋まって行くんだってさ」
「一緒に住み始めたところなのに?」
「夢……あるだろ? こんな式したいとか、やっぱり女性は」
「んー……そうねぇ」
幸せ過ぎて、もうそんな事考えてなかったな。
「麗佳んとこも、お祖父さんもお祖母さん、ご健在だろ? 見せてあげたい、麗佳の花嫁姿。そうなると、そこから近い所……とか」
この人のこんなところ。いつも、麗佳は?って聞いてくれる。感情を出すのがそんなに得意じゃない私に。大切に思ってくれる、私だけでなく、私に関わる人も、全て。
「このモデルさんより、麗佳のが綺麗だな」
なんて、真顔で言ってる。
「そんな訳、ないでしょ」
「何でウェディングドレスってこんな胸も背中も開いてんの?」
今度は怒り出した。
「うわぁ、脱がせてぇ」
と、和装を見てそう言ったものだから、吹き出した。
「脱いだら自分で着られないわよ」
「ああ、そうだな」
「大変よ、12枚も脱がせるの」
「……え?」
「十二単って12枚ではないの?」
「十二単着るの?」
……和装ってそうか、違うのね。皇族のお式を想像したものだから。そもそも、こちらが十二単ということは、男性側は……
あ、ダメ。想像しちゃっ……
そこから笑いすぎて
「……稀代のプレイボーイ」
ああ、彼、貴族なら絶対にそんな感じだ。
「麗佳~」
「ごめんなさい、神前、素敵ね」
息を整えてそう言った。
「俺も、そう思う。で、神様の前で……脱がしはしませんよ」
ニッと笑う彼に、私も笑った。
最初のコメントを投稿しよう!